閉じる

会社運営に役立つ法令情報

【経営】

M&A取引はフライングに要注意 〜強化されつつあるガン・ジャンピング〜

 最近は海外でのM&Aが活発になっていますが、日本の商習慣と同じような感覚で海外でM&Aを行うと、企業結合規制違反やカルテル規制違反に当たり、場合によっては高額な制裁金を課される場合があります。
  平成30年5月2日に、経済産業省は、各国・地域においてガン・ジャンピング(必要手続完了前のM&A取引実行)規制違反への関心が高まっている一方で、企業の必要な対応が明確ではないことを踏まえ、公正かつ適正なM&A推進の観点から、各国・地域の制度、執行事例及び類型ごとの対策をまとめた調査報告書を公表しました。

■ 競争法におけるガン・ジャンピングとは?
●100m走で、スタートの合図(銃声;Gun)の前に動き出して(Jump)しまうような、いわゆる「フライング」のことを一般的には「ガン・ジャンピング」と言う。
●競争法においては、@当局のOK(クリアランス)が出る前にM&A取引等を実行してしまうこと、もしくはAM&A取引を実行する前に「競争機微情報※」を交換してしまうことが「ガン・ジャンピング」とされる。

  企業結合規制は各国・地域で一様ではなく、競争当局への届出要件もそれぞれ異なっていることから、未届出や届出の遅延、競争機微情報の交換等により、企業結合規制回避を意図せずに違反行為に該当してしまう可能性があります。
  こうした背景を踏まえ、M&A取引におけるガン・ジャンピングに関する各国・地域の制度及び執行事例の分析・違反類型の整理を行い、類型ごとの対策がまとめられています。

■ 各国・地域の企業結合規制とガン・ジャンピング規制
日本の独禁法とは異なり、他の国・地域では「支配」や「受益的所有権」で届出要否が判断される場合があります。 【出典 経済産業省「海外ガン・ジャンピング規制についての実態と対策調査報告書を作成しました」より】
■ どのようなことが違反になる?
・M&A取引実行(クロージング)前に当事会社間での、A.競争機微情報の交換、B.影響力の行使、C.共同・調整行為の実行等は、ガン・ジャンピングの問題を生じさせる可能性がある。
 ・また、M&A取引契約において、D.取引実行前に相手会社を拘束する規定を設けること、も問題となる可能性がある。

■ ガン・ジャンピングの4類型
 ガン・ジャンピングの問題があるとされた個別事例を、日本を含む12カ国・地域の21事例について調査し、以下4類型に分類されています。

■ 類型1 手続法違反(企業結合規制違反)
<事前届出制度に基づく届出が適時に行われなかったことによる届出・待機義務違反>
具体的事例:ノルウェーのサーモン養殖加工会社であるマリンハーベスト
届出・待機義務違反で約26億円の制裁金を科された。

■ 類型2 手続法違反(企業結合規制違反)
<複雑なスキームを使ったM&A取引に関する届出・待機義務違反>
具体的事例:キャノン/東芝メディカル/東芝
日本・・・公正取引委員会が、独占禁止法違反につながるとして当事会社に注意
中国・・・中国商務部は届け出義務違反として約510万円の罰金を賦課
欧州・・・欧州委員会は、届け出義務違反の疑いがあるとして異議告知書を送付

■ 類型3 手続法違反(企業結合規制違反)
<クリアランス取得前に、M&A取引の対象会社に対する支配が買主に移転したことや対象会社に対する影響力の行使が発生したことによる届出・待機義務違反>
※当事会社が競争事業者である場合、競争事業者の間で情報交換が行われることによって同時にカルテル規制違反(類型C)にもなりえます。
具体的事例:フランスの大手通信会社アルティス社
買収相手にクリアランス取得前に決定的な影響力を行使し、また、戦略的情報にアクセスできるようになっていたことから、約105億円の罰金を科された。

■ 類型4 実体法違反(カルテル規制違反)
<M&A取引の過程における競争事業者である当事会社間の行き過ぎた情報交換に伴うカルテル規制違反>
具体的事例:アメリカの木工品製造会社のフレークボード社
待機期間中に影響力を行使したとして待機義務違反、また、顧客移転等の協調行為がカルテル規制違反でもあるとして、フレークボード社と相手先企業双方にそれぞれ約2億円の制裁金が課された。

■ M&A取引のプロセスとガン・ジャンピングの類型及びその対策


ガン・ジャンピング違反は、競争機微情報の交換など、意図せずに違反行為を行い、当局から指摘を受けて初めて当事会社が認識することが多いです。昨今、欧米を中心にガン・ジャンピングへの執行は強化されつつあり、巨額の制裁金が課された事例も存在しているので、適切なリスク管理をしてガン・ジャンピング違反となる可能性を限りなく低下させることが重要と思われます。
 

詳しくは下記参照先をご覧ください。

参照ホームページ [ 経済産業省 ]
http://www.meti.go.jp/press/2018/05/20180502002/20180502002.html

ページTOPへ