【経営】
特許庁は、自らの商標を他人に商標登録出願されていたとしても、商標登録を断念しないよう注意喚起を行っています。平成30年6月9日に改正商標法が施行され、もとの出願が手数料未納により却下されたときは、分割出願の出願日はもとの出願の出願日には遡及しないこととなりました。一部の出願人の方から他人の商標の先取りとなるような出願などの商標登録出願が大量に行われていた問題を受けて改正され、今後は分割出願があっても、後に出された出願を、従来より早く登録することが可能になります。
近年、一部の出願人が他人の商標の先取りとなるような出願などの商標登録出願が大量に行われ、これらのほとんどが出願手数料の支払いのない手続上の瑕疵のある出願となっていました。
このような出願については、出願の日から概ね4〜6カ月で出願の却下処分※1が行われていますが、これまでは、このような出願をもとの出願とした分割出願が行われた場合、分割出願の効果(出願日の遡及)により、もとの出願が却下された後も事実上もとの出願が残り、後に出された出願の早期登録が難しい場合がありました。
※1
出願手数料の支払いを失念した等の手続上の瑕疵のある出願でも、まず出願を受け付けて、一定の期間内に出願手数料の支払いの機会を設けるとともに、出願人が出願手数料を支払う意思のないことを確認したうえで出願を却下処分とされ、その出願は最初からなかったものとされます。
分割出願において、こうした効果が生じることに鑑みると、分割出願をしようとする者が、親出願の出願手数料の納付義務を果たしていない場合にもこれを認めることは適切ではありません。
今回の改正は、親出願の出願手数料を納付したものに限り、分割出願について、出願日の遡及という効果を与えることで、商標登録出願手続の適正化を図ることを目的とするものです。
■改正の内容
商標法第10条第1項が規定する商標登録出願の分割要件に、親出願の出願手数料を納付することが追加され、当該要件を満たしていない分割出願については、出願日が親出願をした日に遡及しないこととなります。
改正商標法第10条第1項に基づく商標登録出願の分割の要件は、以下のとおりになり、(5)の要件が加わります。
(1)親出願が審査、審判若しくは再審に係属していること。
(2)子出願が、親出願の商標と同一であること。
(3)子出願に係る指定商品・指定役務が分割出願直前の親出願に係る指定商品・指定役務の一部であること。
(4)子出願に係る指定商品・指定役務が、子出願と同時に手続補正書によって親出願から削除されていること。
(5)親出願の出願手数料が納付されていること。
【出典 特許庁「自らの商標を他人に商標登録出願されている皆様へ(ご注意)」より】
また、仮に出願手数料の支払いがあった場合でも、出願された商標が、出願人の業務に係る商品・役務について使用するものでない場合(商標法第3条第1項柱書)※2や、他人の著名な商標の先取りとなるような出願や第三者の公益的なマークの出願である等の場合(同法第4条第1項各号)※3には、商標登録されることはありません。
※2 一個人や一企業等が本来想定される商標の使用の範囲を超える多数の出願を行う場合には、商標を自己の業務に使用する蓋然性が極めて低いものとして、商標法第3条第1項柱書の拒絶理由に該当し登録できません。
※3 他人が既に使用している商標について先取りとなるような出願の場合や、国・自治体等の公益的な標章を関係のない第三者が出願する場合には、商標法第4条の拒絶理由に該当し登録できません。
■参考資料
【出典 特許庁「権利はどう違うの? 〜特許っていくらでとれるの?〜」より】
詳しくは下記参照先をご覧ください。