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【経営】

「多様化する労働契約のルールに関する検討会」の報告書を公表

 無期転換ルールに関する見直しや多様な正社員の労働契約関係の明確化等について、厚生労働省の「多様化する労働契約のルールに関する検討会」において検討が行われてきましたが、検討会の報告書が取りまとめられ公表されています。労働契約法の一部を改正する法律(平成24年法律第56号)附則3項においては、同法施行後8年を経過した場合において、改正後の労働契約法(平成19年法律第128号)18条の規定に基づく無期転換ルールについて、「その施行の状況を勘案しつつ検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて必要な措置を講ずるもの」とされています。

また、勤務地限定正社員や職務限定正社員等の多様な正社員は、無期転換ルールによって無期雇用となった社員の重要な受け皿の1つとして期待されるところ、規制改革実施計画(令和元年6月閣議決定)において、令和2年度中に多様な正社員の雇用ルールの明確化について検討を開始することとされています。

このため、無期転換ルールに関する見直しと多様な正社員の雇用ルールの明確化(以下「労働契約関係の明確化」という。)等について検討を行うことを目的として、令和3年3月以降、「多様化する労働契約のルールに関する検討会」(以下「本検討会」という。)を開催し、13回にわたって検討を行ってきました。検討に当たっては、企業及び労働者を対象とした実態調査を行うとともに、労使その他の関係者からのヒアリングを行っています。これらの実態等を踏まえて、議論を重ね、その議論の成果を報告書として取りまとめたものです。

【多様化する労働契約のルールに関する検討会報告書の概要】
1.無期転換ルールに関する見直し
(1)総論
•制度活用状況を踏まえると、無期転換ルール(※)の導入目的である有期契約労働者の雇用安定に一定の効果が見られる。
※無期転換ルール:労働契約法(以下「法」という。)に基づき、有期労働契約が繰り返し更新されて通算5年を超えたときは、労働者の申込みにより、期間の定めのない労働契約に転換できるルール
•また、通算年数などによる更新上限の導入は、無期転換ルール導入前と比べて大きく増加していない。他方、制度の十分な活用への課題や、望ましくない雇止め、権利行使を抑止する事例等も見られる。
•現時点で無期転換ルールを根幹から見直さなければならない問題が生じている状況ではないが、各企業における有期労働契約や無期転換制度について、労使双方が情報を共有し、企業の実情に応じて適切に活用できるようにしていくことが適当。
•なお、今後、制度の更なる活用に伴い、引き続き状況を注視し、必要に応じて改めて検討する機会が設けられることが適当。

(2)無期転換を希望する労働者の転換申込機会の確保
•労使とも無期転換ルールの認知度に課題があり、更なる周知が必要。
•労働者が無期転換ルールを理解した上で申込みを判断できるよう、無期転換申込権が発生する契約更新時に、労働基準法の労働条件明示事項として、転換申込機会と無期転換後の労働条件について、使用者から個々の労働者に通知することを義務づけることが適当。

(3)無期転換前の雇止め等
•無期転換前の雇止め等について、法や裁判例等に基づく考え方を事例に応じて整理し、周知するとともに、個別紛争解決制度による助言・指導で活用していくことが適当。
•紛争の未然防止や解決促進のため、@更新上限の有無及びその内容の明示の義務づけA並びに最初の契約締結より後に更新上限を新たに設ける場合には労働者の求めに応じた上限設定の理由説明の義務づけを措置することが適当。
•無期転換申込みを行ったこと等を理由とする不利益取扱い(解雇、雇止め、労働条件の引下げ等)はその内容に応じて司法で救済されうるものであり、現行法等の周知徹底が適当。また、権利行使の妨害抑止につながるような方策を検討することが適当。

4)通算契約期間及びクーリング期間
•通算契約期間及びクーリング期間(通算契約期間をリセットする規定)について、制度が実質的に適用されてから長くなく、特に変えるべき強い事情もないことから、制度の安定性も勘案し、現時点で枠組みを見直す必要は生じていないと考えられる。法の趣旨に照らして望ましいとは言えない事例等の更なる周知が適当。

(5)無期転換後の労働条件
•無期転換後の労働条件について、有期契約時と異なる定めを行う場合の法令や裁判例等に基づく考え方を整理し、周知することが適当。また、正社員登用やキャリアコースの検討など企業内での無期転換後の労働条件の見直しの参考になる情報提供を行うことが適当。
•無期転換者と他の無期契約労働者との待遇の均衡について、法3条2項を踏まえて均衡考慮が求められる旨の周知や、法4条を踏まえて使用者に無期転換後の労働条件について考慮した事項の労働者への説明を促す措置を講じることが適当。
•無期転換後も、パート・有期労働法に基づき短時間・有期契約労働者等の処遇の見直しが行われる際には、フルタイムの無期転換者についても、併せて法3条2項も踏まえて見直しを検討することが望ましい旨を周知していくことが考えられる。

(6)有期雇用特別措置法に基づく無期転換ルールの特例
•特例が知られていない現状があるため、更なる周知を行うことが適当。


2.多様な正社員の労働契約関係の明確化等
(1)総論
•職務、勤務地又は労働時間を限定した多様な正社員については、いわゆる正社員と非正規雇用の労働者の働き方の二極化緩和労働者のワーク・ライフ・バランス確保や自律的なキャリア形成優秀な人材の確保や企業への定着の観点から、労使双方にとって望ましい形での普及・促進が必要。
•また、労働契約が多様化する中、従来からの統一的・集団的な労働条件決定の仕組みの下では勤務地限定等の個別的な労働契約内容が曖昧になりやすいことに起因する労使紛争の未然防止や、労使双方の予見可能性の向上に加え、労使間の情報の質・量の格差是正や契約に係る透明性の確保を図ることが必要。
•こうした観点から、労使自治や契約自由の原則の大前提として、法令上の措置も含め、労働契約関係の明確化を検討することが適当。
•なお、労働契約関係の明確化は、多様な正社員のみならず、全労働者に対して有益であるため、労働者全般を対象に検討することが適当。

(2)労働契約関係の明確化
<労働契約締結時の労働条件の確認>
•現行法上、労働基準法15条の労働条件明示(以下「15条明示」という。)では、雇入れ直後の就業の場所及び従事すべき業務を明示することとされており、勤務場所や業務内容の変更範囲までは求められていないが、予見可能性の向上等の観点から、多様な正社員に限らず労働者全般について、15条明示の対象に就業場所・業務の変更の範囲を追加することが適当。

<労働条件が変更された際の労働条件の確認>
•15条明示は、契約締結に際し行われるものであり、労働条件が変更された際にまでは義務付けられていないが、個別合意による変更の場合に書面明示が保障されていないほか、仮に15条明示の対象に就業場所・業務の変更範囲を追加する場合に変更後の労働条件を明示しなければ当該変更前の労働条件が存続しているものと誤解したままとなるリスクがあることから、労働条件の変更時も15条明示の対象とすることが適当。
•具体的には、変更後の労働条件の書面確認の必要性に鑑み、多様な正社員に限らず労働者全般について、労働契約締結時に書面で明示することとされている労働条件が変更されたとき(@就業規則の変更等により労働条件が変更された場合及びA元々規定されている変更の範囲内で業務命令等により変更された場合を除く。)は、変更の内容を書面で明示する義務を課す措置が考えられる。
•本措置に併せて、就業規則について労働者が必要なときに容易に確認できるような方策や中小企業への支援の検討が必要。
•なお、就業場所・業務に限って本措置の対象とすべきとの意見、就業規則の新設・変更による場合も明示の対象とすべきとの意見、本措置に関する電子的な方法の明示も検討すべきとの意見もあった。

<労働契約関係の明確化を図る場合の留意点>
•労働契約関係の明確化を図る場合に留意すべき点として、労働条件の変更や、多様な正社員の勤務地等の変更、事業所廃止等を行う場合の考え方について、裁判例等を整理して周知することが適当。

3.労使コミュニケーション等
•無期転換制度等を定める際に、無期転換者・有期契約労働者の意見が反映されるよう、労使コミュニケーションを促すことが適当。
•多様な正社員の働き方を選びやすくするためにも、いわゆる正社員自体の働き方の見直しを含め、労使コミュニケーションを促すことが適当。
•また、無期転換や多様な正社員に係る制度等については、労働者全体に関わるものであり、雇用形態間の待遇の納得感が得られるようにするため、個々の労働者の意見を吸い上げるとともに、労働者全体の意見を調整することも必要。その上で、過半数代表者に関する制度的担保や新たな従業員代表制の整備を含め、多様な労働者全体の意見を反映した労使コミュニケーションの促進を図る方策も中長期的な課題。

詳しくは下記参照先をご覧ください。

参照ホームページ [ 厚生労働省 ]
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_24789.html

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