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【経営】

「GX実現に向けた基本方針」が閣議決定されました

 昨年2月のロシアによるウクライナ侵略以降、エネルギー安定供給の確保が世界的に大きな課題となる中、GX(グリーントランスフォーメーション)を通じて脱炭素、エネルギー安定供給、経済成長の3つを同時に実現するべく、GX実行会議や各省における審議会等での議論を踏まえ、昨年末に「GX実現に向けた基本方針」を取りまとめました。同基本方針について、パブリックコメント等を経て、2023年2月10日閣議決定を行いました。

1.背景
昨年7月27日から岸田内閣総理大臣を議長とするGX実行会議が開催され、昨年末に基本方針が取りまとめられました。その後、パブリックコメント等を経て、閣議決定されました。

・カーボンニュートラルを宣言する国・地域が増加(GDPベースで9割以上)し、排出削減と経済成長をともに実現するGXに向けた長期的かつ大規模な投資競争が激化。GXに向けた取組の成否が、企業・国家の競争力に直結する時代に突入。また、ロシアによるウクライナ侵略が発生し、我が国のエネルギー安全保障上の課題を再認識。
・こうした中、我が国の強みを最大限活用し、GXを加速させることで、エネルギー安定供給と脱炭素分野で新たな需要・市場を創出し、日本経済の産業競争力強化・経済成長につなげていく。
・第211回国会に、GX実現に向けて必要となる関連法案を提出する(下線部分が法案で措置する部分)。

2.概要
気候変動問題への対応に加え、ロシア連邦によるウクライナ侵略を受け、国民生活及び経済活動の基盤となるエネルギー安定供給を確保するとともに、経済成長を同時に実現するため、主に以下二点の取組を進めます。

(1)エネルギー安定供給の確保を大前提としたGXの取組
1:徹底した省エネの推進

・複数年の投資計画に対応できる省エネ補助金を創設など、中小企業の省エネ支援を強化。
・関係省庁が連携し、省エネ効果の高い断熱窓への改修など、住宅省エネ化への支援を強化。
・改正省エネ法に基づき、主要5業種(鉄鋼業・化学工業・セメント製造業・製紙業・自動車製造業)に対して、政府が非化石エネルギー転換の目安を示し、更なる省エネを推進。

2:再エネの主力電源化
・2030年度の再エネ比率36~38%に向け、全国大でのマスタープランに基づき、今後10年間程度で過去10年の8倍以上の規模で系統整備を加速し、2030年度を目指して北海道からの海底直流送電を整備。これらの系統投資に必要な資金の調達環境を整備
・洋上風力の導入拡大に向け、「日本版セントラル方式」を確立するとともに、新たな公募ルールによる公募開始。
地域と共生した再エネ導入のための事業規律強化。次世代太陽電池(ペロブスカイト)や浮体式洋上風力の社会実装化。

3:原子力の活用
・安全性の確保を大前提に、廃炉を決定した原発の敷地内での次世代革新炉への建て替えを具体化する。その他の開発・建設は、各地域における再稼働状況や理解確保等の進展等、今後の状況を踏まえて検討していく。
厳格な安全審査を前提に、40年+20年の運転期間制限を設けた上で、一定の停止期間に限り、追加的な延長を認める。その他、核燃料サイクル推進、廃炉の着実かつ効率的な実現に向けた知見の共有や資金確保等の仕組みの整備や最終処分の実現に向けた国主導での国民理解の促進や自治体等への主体的な働き掛けの抜本強化を行う

4:その他の重要事項
・水素・アンモニアの生産・供給網構築に向け、既存燃料との価格差に着目した支援制度を導入。水素分野で世界をリードするべく、国家戦略の策定を含む包括的な制度設計を行う。
・電力市場における供給力確保に向け、容量市場を着実に運用するとともに、予備電源制度や長期脱炭素電源オークションを導入することで、計画的な脱炭素電源投資を後押しする。
・サハリン1・2等の国際事業は、エネルギー安全保障上の重要性を踏まえ、現状では権益を維持。不確実性が高まるLNG市場の動向を踏まえ、戦略的に余剰LNGを確保する仕組みを構築するとともに、メタンハイドレート等の技術開発を支援。
・この他、カーボンリサイクル燃料(メタネーション、SAF、合成燃料等)、蓄電池、資源循環、次世代自動車、次世代航空機、ゼロエミッション船舶、脱炭素目的のデジタル投資、住宅・建築物、港湾等インフラ、食料・農林水産業、地域・くらし等の各分野において、GXに向けた研究開発・設備投資・需要創出等の取組を推進する。


(2)「成長志向型カーボンプライシング構想」等の実現・実行
昨年5月、岸田総理が今後10年間に150兆円超の官民GX投資を実現する旨を表明。その実現に向け、国が総合的な戦略を定め、以下の柱を速やかに実現・実行。

1:GX経済移行債を活用した先行投資支援
・長期にわたり支援策を講じ、民間事業者の予見可能性を高めていくため、GX経済移行債を創設し(国際標準に準拠した新たな形での発行を目指す)、今後10年間に20兆円規模の先行投資支援を実施。民間のみでは投資判断が真に困難な案件で、産業競争力強化・経済成長と排出削減の両立に貢献する分野への投資等を対象とし、規制・制度措置と一体的に講じていく。

2:成長志向型カーボンプライシング(CP)によるGX投資インセンティブ
・成長志向型CPにより炭素排出に値付けし、GX関連製品・事業の付加価値を向上させる。
・直ちに導入するのでなく、GXに取り組む期間を設けた後で、エネルギーに係る負担の総額を中長期的に減少させていく中で導入(低い負担から導入し、徐々に引上げ)する方針を予め示す。
⇒支援措置と併せ、GXに先行して取り組む事業者にインセンティブが付与される仕組みを創設。
<具体例>
(i)GXリーグの段階的発展→多排出産業等の「排出量取引制度」の本格稼働【2026年度〜】
(ii)発電事業者に、EU等と同様の「有償オークション」を段階的に導入【2033年度〜】
※CO2排出に応じて一定の負担金を支払うもの
(III)化石燃料輸入事業者等に、「炭素に対する賦課金」制度の導入【2028年度〜】
※なお、上記を一元的に執行する主体として「GX推進機構」を創設

3:新たな金融手法の活用
GX投資の加速に向け、「GX推進機構」が、GX技術の社会実装段階におけるリスク補完策(債務保証等)を検討・実施。
・トランジション・ファイナンスに対する国際的な理解醸成へ向けた取組の強化に加え、気候変動情報の開示も含めた、サステナブルファイナンス推進のための環境整備を図る。

4:国際戦略・公正な移行・中小企業等のGX
・「アジア・ゼロエミッション共同体」構想を実現し、アジアのGXを一層後押しする。
・リスキリング支援等により、スキル獲得とグリーン等の成長分野への円滑な労働移動を共に推進。
・脱炭素先行地域の創出・全国展開に加え、財政的支援も活用し、地方公共団体は事務事業の脱炭素化を率先して実施。新たな国民運動を全国展開し、脱炭素製品等の需要を喚起。
・事業再構築補助金等を活用した支援、プッシュ型支援に向けた中小企業支援機関の人材育成、パートナーシップ構築宣言の更なる拡大等で、中小企業を含むサプライチェーン全体の取組を促進。

(3)進捗評価と必要な見直し
GX投資の進捗状況、グローバルな動向や経済への影響なども踏まえて、「GX実行会議」等において進捗評価を定期的に実施し、必要な見直しを効果的に行っていく。これらのうち、法制上の措置が必要なものを第211回国会に提出する法案に明記し、確実に実行していく

【「GX(グリーントランスフォーメーション)」とは】
「GX」とはGreen Transformationの略語で、経済産業省が提唱する脱炭素社会に向けた取り組みを指します。GXは、カーボンニュートラルの実現のための取り組みで、地球温暖化による気候変動や異常気象の加速を抑えることが目的です。
また、カーボンニュートラルとは温室効果ガスの排出量と吸収量を均衡させることをいい、経済産業省はこの実現を2050年までの目標としています。GXは、持続可能な社会の実現としてSDGs(持続可能な開発目標)が国連サミットで採択されたことをきっかけに、世界でも急速に取り組みが加速しました。
さらにGXでは、カーボンニュートラルによる環境保護だけでなく、これを契機とした経済成長の両立を目指す取り組みであることが大きな特徴です。

詳しくは下記参照先をご覧ください。

参照ホームページ [ 経済産業省 ]
https://www.meti.go.jp/press/2022/02/20230210002/20230210002.html

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