【経営】
首相官邸において、「第27回 新しい資本主義実現会議」が開催され、三位一体の労働市場改革の実行等について議論が行われました。議長である岸田総理は、この日の議論を踏まえ、「来年以降、持続的に賃上げを実現するためにも、社内・社外ともに労働移動の円滑化が重要である。」「日本企業の競争力維持のため、ジョブ型人事の導入を進めていく。」等、コメントしています。
■論点案
(三位一体の労働市場改革の実行、企業内・同一産業内・異なる産業間の労働移動円滑化)
・勤続年数別の賃金を国際比較すると、いずれの先進国も勤続年数に応じて賃金が上昇する傾向があるが、我が国の特徴として、若い世代の賃金が低く、勤続15-19年目以降から急速に上昇する傾向がある。これが、未婚率の上昇や平均出生子数の低さに、悪影響を与えているのではないか。
・34歳以下では過半数の人が転職の希望をもっており、在来の終身雇用型の雇用慣行は世代が若いほどに適合しなくなってきている。同様に、我が国においては、急速に、自分の才能を生かすため積極的に転職する方がよいと考える方が急増している。終身雇用や転職に対する考え方が変化していることに対する対応が必要ではないか。
・企業間の労働移動が円滑である国ほど、生涯賃金上昇率が高い。賃金上昇率を引き上げるためにも、企業内・企業間・産業間の労働移動の円滑化が必要ではないか。
・従来の我が国の雇用制度においては、新卒一括採用中心、異動は会社主導、企業から与えられた仕事を頑張るのが従業員であり、将来に向けたリ・スキリングが活きるかどうかは人事異動次第。従業員の意思による自律的なキャリア形成が行われにくいシステムであった。現下の人手不足や産業構造の変化に際し、個々の職務に応じて必要となるスキルを設定し、スキルギャップの克服に向けて、従業員が上司と相談をしつつ、自ら職務やリ・スキリングの内容を選択していくジョブ型人事に移行する必要があるのではないか。
・実態面としても、従来の制度では、@最先端の知見を有する人材など専門性を有する人材が採用しにくい、A若手を適材適所の観点から抜擢しにくい、B日本以外の国がジョブ型人事が一般的となっているため社内に人材をリテインすることが困難、との危機感が日本企業から提示されている。日本企業の競争力維持のため、対応を図る必要があるのではないか。
(ジョブ型人事指針)
・他方で、日本企業といっても、個々の企業の経営戦略や歴史など実態が千差万別であることに鑑み、自社のスタイルに合った導入方法を各社が検討できることが大切ではないか。このため、既に導入している多様な企業に御協力をいただき、導入企業の多くの事例を掲載した「ジョブ型人事指針」を策定するとともに、その内容については可能な限り多様な情報提供を進めるべきではないか。
・指針の策定にあたっては、掲載する企業事例のそれぞれについて、@制度の導入目的、経営戦略上の位置づけ、A導入範囲、等級制度、報酬制度、評価制度などの制度の骨格、B採用、キャリア自律支援、人事異動、等級の変更などの雇用管理制度、C人事部と各部署の権限分掌の内容、D労使コミュニケーションなどの導入プロセス、などについて、個々の企業の特徴が分かるよう、できるだけ具体的に各企業に情報提供をいただくのではないか。
・人手不足の中で仕事をしたいシニア層に仕事の機会を提供するため、ジョブ型人事の導入にあわせて、役職定年・定年制の見直しなどを進めた企業については、協力をいただき、その内容を情報提供していくのではないか。この際、能力のある若手が不満に感じることがないよう、いかにシニア層のスキルに応じた処遇を進めるかについても、情報提供をいただくのではないか。
・キャリアコンサルティングによって仕事への意欲が高まった、自己啓発する労働者が増えた、と企業が評価していることに鑑み、我が国全体に広げていくべきではないか。
・非正規雇用労働者の処遇を上げていくためには、同一労働・同一賃金制の徹底した施行が不可欠ではないか。この面においても、労働基準監督署が施行の徹底を図っていくべきではないか。
・一人当たり労働生産性は、近年大企業が急速な伸びを示しているのに対し、中小企業の伸びが停滞している。人手不足の中、中小・小規模企業の労働生産性向上が急務ではないか。
・AIツールの導入については、特にスキルの低い従業員に対する効果が顕著である。高スキルの労働者のベストプラクティスを反映しているため、低スキルの労働者がその恩恵を受けやすい。人手不足の中小・小規模企業にAIツールの導入を加速すべきではないか。
・また、AIツールは、OJTを補完し、従業員に学習効果をもたらすことからも、その導入加速が必要ではないか。
・中小企業施策において、省力化効果の高い汎用製品をカタログから選ぶ支援制度が導入されたが、各産業分野、各省庁においても、政府を挙げて省力化投資の支援を加速すべきではないか。
・我が国の企業で、兼業・副業が認められている割合は過半数に達した。従業員のモチベーション向上や定着率の向上のためにも更なる導入加速を図るべきではないか。
・兼業・副業が業績向上につながっている会社は、@契約条件を詳細に取り決める、➁業務内容・期待成果を明確にしている、といった特徴がある。導入するにあたって、事前のすり合わせを重視すべきではないか。
(資産運用立国)
・勤労所得の拡大に加えて、資金の流れを創出し、金融資産所得を増やしていくため、資産運用立国の取組を推進することが重要ではないか。この中で、アセットオーナーは、成長の果実を幅広く家計にもたらすために、運用力の強化が必要ではないか。
・アセットオーナー・プリンシプルを小規模も含め様々なアセットオーナーに浸透させるための取組が必要ではないか。例えば、関係省庁、公的年金・共済組合などのアセットオーナーが一体となって、小規模なアセットオーナーの参考にもなるよう、取り組む工夫が必要ではないか。
「ジョブ型人事指針」がどのような内容となるのか?今後の動向に注目していきましょう。
詳しくは下記参照先をご覧ください。