昨今の急激な物価上昇を乗り越え、持続的な構造的賃上げを実現するためには、特に我が国の雇用の7割を占める中小企業がその原資を確保できる取引環境を整備することが重要です。中小企業庁では、価格転嫁対策や下請取引の適正化のための様々な施策を講じております。足元の価格転嫁・取引適正化施策と今後の施策展望について、以下にまとめました。
1:新たな取引適正化対策の全体像(価格転嫁)
取引段階ごとの課題への対応

・企業の社名公表、指導・助言等
発注企業ごとの交渉・転嫁の状況の公表、大臣名での指導・助言(価格交渉月間)
(1月にも実施)
・多段階での連携(下請振興法改正)
3以上の取引段階にある事業者が連携した事業計画を承認・支援し、1つ先の取引先とも一体の価格転嫁を促す
・頂点企業への要請(総理指示)
直接の取引先の更に先まで考慮した価格決定や、それが隅々まで伝わる情報発信を、各事業所管大臣から要請
・行政指導の強化(新たな運用)
下請Gメン等が「発注者のさらに上位が問題」との声を把握した場合に強力を要請
・下請法改正・執行強化(下請法改正)
「協議に応じない価格決定」等を新たに禁止する下請法改正(案)検討
・下請法執行:公正取引委員会との連携強化(個別事件ごとの早期連携)
下請Gメンによる調査結果の活用
・勧告を受けた企業へ、
補助金交付や入札参加資格を停止する方策の検討
・法律適用の拡大(下請法・振興法改正)
資本金に加え、
従業員数も適用基準に追加し、対象を拡大する方向で検討
・行政指導の強化(新たな運用)
下請Gメン等が、芳しくない取引実態を把握した場合には、迅速に注意喚起
2:新たな取引適正化対策の全体像(代金支払、型取引、知的財産等)
取引段階ごとの課題への対応

・企業の社名公表等の拡大(新たな運用)
次回3月の価格交渉促進月間で、新たに、振込手数料や割引料の受注者負担の実態も調査。発注企業ごとに結果公表
・多段階での連携・支払改善(下請振興法改正)
3以上の取引段階にある事業者が連携した事業計画を承認・支援し、1つ先の取引先とも一体の支払条件改善を促す
・行政指導の強化(新たな運用)
下請Gメン等が「発注者のさらに上位が問題」との声を把握した場合に、迅速な強力要請
・手形利用の禁止、支払迅速化、型の対象拡大(下請法改正・新たな運用)
以下の方向で検討
・手形による代金支払いを禁止
電子記録債権などは、支払期日までに満額現金化できないものは禁止
・金型以外(木型・樹脂型・専用治具等)も新たに規制対象化
型の所有権の所在にかかわらず、発注側が受注側に指示する「型の無償保管」を、下請法違反とガイドライン等に明示
・知的財産に係る実態調査(新たな運用)
幅広い業種での知的取引の実態調査を行い、各種ガイドライン等の見直しを検討
・法律適用の拡大(下請法・振興法改正)
資本金に加え、従業員数も適用基準に追加し、対象を拡大する方向で検討。
・行政指導の強化(新たな運用)
下請Gメン等が、芳しくない取引実態を把握した場合には、迅速に注意喚起。
3:新たな取引適正化対策の全体像(商慣行も含めた、業界全体の課題への対応)
個別の企業間取引の是正に加え、業界全体による、業界固有の商慣行に即した、自主的な取引適正化を推進

・業界ごとの自主的な取引適正化
29業種・79の業界団体が、それぞれの取引慣行を踏まえた策定済みの自主行動計画に基づき対応
労務費指針など政府の対策を踏
まえた適時の計画改訂や、遵守状況の調査など、業界全体で自主的に取り組む
・業界全体での一層の取引適正化の徹底(総理指示)
中小企業の価格転嫁、価格転嫁を阻害する商慣習の一掃に向け、各事業所管大臣が、各業界団体へ以下を要請
@各業界において、下請法違反が無いかの自主点検や、違反があった場合の不利益の補償
Aサプライチェーンの頂点となる企業や業界における
・直接の取引先の更に先まで価格転嫁が可能となるような価格決定
・それが隅々まで伝わる情報発信
・「労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針」の遵守の徹底
※各業界団体・企業が同時に取り組むことで、業界横断で取引適正化を徹底