【労務】
職務給は「個々の企業の実態に応じた職務給の導入」として、「リ・スキリングによる能力向上支援」、「成長分野への労働市場円滑化」と並び、三位一体の労働市場改革の柱の1つとされています。職務の内容や重要性などを基に給与水準が決められますが、その形態や位置づけは企業によって様々です。ここでは、職務給を導入した企業や社員の声、導入するにあたっての取組み・工夫、課題等のより詳細な内容をご紹介します。
・職務給の導入に向けた手引き
近年、働き方やキャリアに対する考え方の変化や、仕事と報酬の関係性の見直しなどを背景として、職務給に対する注目が高まっています。本手引きでは、職務給を「基本給における『役割・職務の重要度』に基づいて決定される部分」ととらえています。職務給というと、これまで企業が採用してこなかった特別な賃金体系と思われがちですが、今回行った調査では、すでに多くの企業が多様な形態の職務給を導入していることが分かりました。企業が職務給の導入を考えるにあたっては、導入の具体的な手順や職務給の制度の詳細を知るだけではなく、職務給がどのような導入状況にあるのかを知る必要があります。
そこで、本手引きでは
1:職務給を導入している企業の特徴
2:企業・社員が感じている職務給のメリット
3:企業による職務給を導入するにあたっての取組み・工夫
4:職務給の課題
を紹介します。
これから職務給の導入を検討されている、または導入後の運用に悩んでいる企業の皆様にとって、本手引きの内容がその一助となれば幸いです。
職務給には、例えば以下のメリットがあります
職務給を導入している企業では、「社員に求める役割・職務の要件が明確になる」ことをメリットに挙げる企業が最も多く、「仕事に応じた賃金を支払うことができる」、「管理職層の確保・定着につながる」等をメリットに挙げる企業も多くあります。
管理職と非管理職にかかわらず、基本給に占める職務給の割合が高い社員ほど、モチベーション、能力開発、キャリア形成等に対する職務給の影響をポジティブに評価しています。
管理職、非管理職に関わらず、基本給に占める職務給の割合が高い社員ほど、「できるだけ長く今の会社に勤めていたい」と考える割合が高くなっています。
職務給の割合が大きい(職務給スコアが大きい)企業ほど、人材マネジメント(採用、職務の決め方、配置転換、育成、評価、雇用保障)についても職務を基軸とする程度が高い傾向にあります。
職務給を導入する際には、人材マネジメントの職務基軸の程度との関連も考慮することが役立ちます。
職務給を導入している企業では、等級に対応して基本給に幅を持たせるレンジ・レート方式、それも等級に対する基本給が等級間で重複するレンジ・レート方式が一般的です。
職務評価の代表的な方法には次の2つがあります
・要素別の評価役割・職務の要素ごとに高い/ 低いを評価し、その評価点の合計をもって、役割・職務の重要度を決める)
・総合的な評価(役割・職務を要素別ではなく総合的に評価して、重要度を決める)
職務給を決めるには、役割・職務の重要度を測るために職務評価を行う必要があります。職務給の割合が大きい(職務給スコアが大きい)企業ほど、 【要素別の評価】、またはそれに近い方法で職務評価を行っている企業が多くなります。
「役割・職務の分析・評価」、「役割・職務に対応した賃金水準の設定」、「役割・職務の定義」が、企業が職務給を導入して運用するうえでの主要な課題です。
職務給は、等級制度や評価制度はもちろんのこと、採用や配置転換、育成等の広範な人事制度と関連しています。他の人事制度との一体的な運用が可能であるかを事前に検討しておくことは、職務給の円滑な活用に役立ちます。
職務給の導入にあたっては、社員にどのような影響が及ぶかなど、労使間でよく話し合うことが重要です。
また、労働条件の変更を行う場合には、関係法令を踏まえる必要があります。
・ 労働条件の変更には、原則として社員と企業側の合意が必要です(労働契約法第8条)
・ 社員の合意なしに一方的に就業規則を変更して、労働条件を不利益に変更することはできません。
ただし、社員に変更後の就業規則を周知し、かつ、その変更が合理的なものであれば、就業規則の変更によって労働条件を変更することができます(労働契約法第9条、第10条)。
詳しくは下記参照先をご覧ください。