【労務】
[厚生労働省]より「公表」された情報です。
厚生労働省は、いわゆる「スポットワーク」における留意事項等を取りまとめた労働者及び使用者向けのリーフレットを作成し公表するとともに、いわゆる「スポットワーク」の雇用仲介を行う事業者が加入する一般社団法人スポットワーク協会に対し、会員を通じた労働者及び使用者への当該リーフレットの周知等を要請しました。
厚生労働省としては、今後も本リーフレットを活用し、いわゆる「スポットワーク」における留意事項等の周知を図ってまいります。
❶ 労働契約締結時における注意点
誰と誰が労働契約を締結するのかを確認しましょう
スポットワークは、事業主とスポットワーカーが直接労働契約を締結することとなり、労働基準法等を守る義務は、労働契約を締結した事業主に生じます。
※ スポットワーカーとスポットワーク仲介事業者が労働契約を結ぶものではありません。
労働契約の成立時期を確認しましょう
労働契約は、労働者が事業主に使用されて労働し、事業主がこれに対して賃金を支払うことについて、労働者及び事業主が合意することによって成立します。(労働契約法第6条)
労働契約の成立時期は個別の具体的な状況によります。原則として、労働契約の成立をもって労働関係法令が適用されることになるので、労使双方で成立時期の認識を共有した上で、労働契約を締結することが求められます。
スポットワークでは、アプリを用いて、事業主が掲載した求人にスポットワーカーが応募し、面接等を経ることなく、短時間にその求人と応募がマッチングすることが一般的です。
面接等を経ることなく先着順で就労が決定する求人では、別途特段の合意がなければ、事業主が掲載した求人にスポットワーカーが応募した時点で労使双方の合意があったものとして労働契約が成立するものと一般的には考えられます。
労働契約成立後の解約(いわゆる「キャンセル」)について、その事由や期限をあらかじめ示した契約(解約権留保付労働契約)を労使間で締結する場合には、当該事由が合理的であることや、労働契約法第3条第1項の労使対等の原則の趣旨を踏まえスポットワーカーにのみ不利な内容にならないことに留意する必要があります。
※ 事業主の都合で仕事を直前に解約することは、就労のためのスポットワーカーの準備を無駄にさせ、その日の別の就労機会を見つける時間的余裕がない状態に陥らせるおそれがあり、労働者保護の観点から、不適切であると考えられます。このため、事業主からの解約の期限については、別の就労機会を見つける時間的余裕に配慮した設定が求められます。
※ 民法上、契約期間の定めのある労働契約については、労使間で特段の合意がない場合は、やむを得ない事由(天災事変等)がある場合を除き、労働契約成立後に解約することはできません。
なお、一旦確定した労働日や労働時間等の変更は、労働条件の変更に該当し、事業主とスポットワーカー双方の合意が必要です。
労働契約成立後は労働基準法等を守りましょう
労働契約が成立すると、事業主には労働基準法等を守る義務が生じます。予定された就業開始前に労働条件を明示することなどが必要となります。
スポットワーカーに労働条件を明示しましょう。労働条件を明示しなかった場合には、労働基準法違反となります。
労働条件を書面の交付などの方法で明示することは事業主の義務であり、未然にトラブルを回避することにもつながります。
労働条件通知書の交付はスポットワーク仲介事業者が代行してくれる場合もありますが、交付は事業主の義務なので、きちんと交付されているか、その内容は適切か、事業主の皆さまは確実に確認しましょう。もしスポットワーク仲介事業者から交付されていない場合、事業主から交付してください。
❷ 休業させる場合の注意点
丸1日の休業または仕事の早上がりをさせることになった
労働契約成立後に事業主の都合で丸1日の休業または仕事の早上がりをさせることになった場合は、労働基準法第26条の「使用者の責に帰すべき事由による休業」となるので、スポットワーカーに対し、所定支払日までに休業手当を支払う必要があります。
※ 休業手当の代わりに、その日に約束した賃金を全額支払うことで差し支えありません。
※ 休業手当を支払う場合であっても、事業主自身の故意、過失等により労働者を休業させることになった場合は、賃金を全額(休業手当を既に支払っている場合は当該手当を控除した額)支払う必要があります。(民法第536条第2項)
❸ 賃金・労働時間に関する注意点
実際の労働時間に対する賃金を労働条件通知書に記載された所定支払日までに支払わなければ労働基準法違反となります。
業務に必要な準備行為等も労働時間です
事業主の指示により、就業を命じた業務に必要な準備行為(指定の制服への着替え等)や業務終了後の業務に関連した後始末(掃除等)を就業先内において行った時間などは労働時間に当たります。求人の際に、これら着替え等の時間も含めて始業・終業時刻を設定しましょう。
予定した始業時刻より前に、事業主の指示により、就業を命じた業務に必要な準備行為(指定の制服への着替え等)などが発生した場合は、その時間を労働時間として取り扱ってください。
なお、事業主の指示により待機を命じた時間も労働時間に該当することから、待機後の事由にかかわらず、事業主は待機時間に対する賃金を支払う必要があることに留意してください。
一方的な賃金の減額は違法です
賃金について、労働条件通知書などで示した額を一方的に減額したり、「別途支払う」としていた交通費などを支払わない場合には、労働基準法違反となります。実際の労働時間を速やかに確認しましょう
スポットワーカーから予定していた労働時間と異なる実際の労働時間による修正の承認申請がなされた場合は、事業主は、賃金はスポットワーカーの生活の糧であることを踏まえ、予定された労働時間に基づき勤務した賃金は遅滞なく支払うとともに、予定の労働時間と異なる時間については、速やかに確認し、労働時間を確定させましょう。
労働時間の考え方については「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」をご覧ください。
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11200000-Roudoukijunkyoku/0000187488.pdf
❹ その他の注意点
通勤途中または仕事中にケガをした場合
スポットワーカーが通勤の途中または仕事中にケガをした場合、スポットワーカーは就労先の事業について成立する保険関係に基づき労災保険給付を受けることができます。(労働者災害補償保険法第7条等)
※ 労災保険料については、事業主のご負担になります。
労働災害防止対策も事業主の義務です
スポットワーカーの労働災害防止のため、労働安全衛生法等に基づく各種措置(雇入れ時等における機械等の危険性や安全装置の取扱方法等の教育の実施等)を講じましょう。
ハラスメント対策も事業主の義務です
スポットワーカーに対するパワハラやセクハラなどハラスメント防止のため、労働施策総合推進法等に基づく各種措置(相談窓口や行為者に対する措置内容の周知等)を講じましょう。
詳しくは下記参照先をご覧ください。