経営
人材不足を解消?中小企業でも導入できる“多様な働き方”の具体策
[厚生労働省]からの「お知らせ」です
多くの企業にとって「人をどう集め、どう定着してもらうか」は大きな課題です。少子高齢化により人材確保が厳しさを増す中、企業が持続的に成長するためには、多様な働き方を導入し、働き手から「選ばれる会社」になることが重要です。働き手の多様なニーズを受け入れ、個々の力を最大限に引き出すことは、単なる人手不足対策にとどまらず、企業の未来を拓く成長戦略そのものでもあります。
厚生労働省より公開されている『「選ばれる」会社をつくる 多様な働き方』ガイドブックでは、中小企業でも取り入れやすい制度や施策の例を紹介しています。本記事では、その一部を掲載いたします。
多様な働き方を実現するための第一歩として、ぜひ自社での取組を検討する際に役立てていただければ幸いです。
1 なぜ多様な働き方なのか
多様な働き方とは、「働く時間」「働く場所」「職務内容」について、従業員一人ひとりのニーズに応じた柔軟な選択を認める働き方のことです。人材の確保や定着に悩む企業にとって、 その実現は課題解決の鍵となります。柔軟な制度を整えることで多様な人材が集まりやすくなるだけでなく、「望まない離職」を防ぎ、今いる従業員も長く安心して働き続けられるようになるためです。
こうした対応が求められる背景には、働く人々の意識の変化があります。人々の理想的な仕事に関する調査では、半数を超える人が「私生活とバランスがとれる仕事」を望んでおり、その割合は「収入が安定している仕事」に次いで高くなっています。私生活とのバランスを重視する人が増える今、個々の生活リズムや事情に寄り添った働き方を整えることは、企業にとっても避けて通れないテーマとなっています。
では、従業員はどのような場面で柔軟な働き方を必要としているのでしょうか。そして、それに応えることは企業にどのような価値をもたらすのでしょうか。次頁では、従業員が抱えるニーズと、企業にとっての導入メリットの例を整理します。
【多様な働き方】に関する様々なニーズと企業における「導入メリット」
多様なニーズを持つ従業員・求職者
様々な従業員の声
- 育児中もキャリアを諦めず、柔軟に働いて成果を出し続けたい
- 子供の成長を傍で見続けながら働ける環境が欲しい(勤務時間の短縮、転勤無しの選択など)
- 家族の通院の付き添い、ケアマネジャーとの面談等の対応をしながらも、仕事を続けたい(時間の調整など)
- 家族の状況に応じ、業務を継続できる働き方を選択したい(在宅勤務など)
- 定年退職後も、長年の経験や知見を活かして社会に貢献し続けたい
- 体力面の変化などに合わせて働く時間や仕事内容を調整し、できるだけ長く働き続けたい
- 通院などの都合に合わせ、勤務時間や日数、働く場所を柔軟に選択しながら安心して働き続けたい
- 体調に応じて、パフォーマンスを最も発揮できる働き方(場所・時間)を選びたい
- フルタイム勤務が難しいなか、現在はパート社員として働いているが、活躍の機会を広げるうえで正社員として働きたい
- 広く職種を経験するよりも、特定の職務領域の中で、専門性を高めていくようなキャリアを歩みたい
企業の対応(例)
導入のメリット
導入した企業の声(例)
採用における応募者増
人材確保が困難な中、短時間正社員制度の導入で応募者が増え、人材確保に大きく貢献。
社員数増により個々の負担も軽減され、より良いワーク・ライフ・バランスを実現。
(A社、宿泊業・飲食サービス業)
人材採用の幅の拡大
リモート・フルフレックス導入により全国から採用が可能となり、地方在住者が社員の半数を占める。特に女性の地方採用が増え、優秀な人材確保につながっている。
(B社、情報通信業)
既存社員の定着率の向上
出産を理由に退職する社員がほぼいなくなった。制度利用者の助言により、勤務継続を決めた例も。育児と両立しやすい環境が採用面にも好影響を与えている。
(C社、卸売・小売業)
業務効率の向上
働く時間を選択することで集中度が高まり、業務処理のスピードが向上。チーム間の業務共有が進み、コミュニケーションが活発化し、生産性が向上した。
(D社、情報通信業)
職場の満足度の向上
働き方に対する満足度のデータが向上。社員個人からも制度を喜ぶ声が多い。
勤務地を変えず働きたい応募者からも働き方について高く評価されている。
(E社、金融・保険業)
企業イメージの向上
社員の生活設計に応じた働き方が可能となり、帰属意識や貢献意欲が向上。取組はメディアにも紹介され、企業イメージ向上に寄与。
(F社、情報通信業)
2 多様な働き方を実現する代表的な施策
1 「働く時間」の選択を支援する制度
短時間正社員制度(多様な正社員制度)
制度の概要
- フルタイム勤務より短い所定労働時間で勤務する「短時間正社員」の雇用区分を設け、働く「時間の長さ」を柔軟にする制度です。
導入のポイント・効果
- 従業員が選んだ短い勤務時間で働き続ける選択肢を設ける点が、この制度の最大の特徴です。
- 育児や介護、治療のための定期通院、自己啓発のための通学といった事情を抱える従業員も、短時間正社員制度の枠内で柔軟に労働時間を設定することで、ライフステージの変化に応じて正社員として働き続けやすくなります。
- パート・アルバイト・派遣社員などが、非正規から正規へ転換する際の、キャリアアップの手段としても活用できます。
留意点
- 制度の目的や期待する役割を、利用者・管理職・従業員に分かりやすく伝え、利用者が希望するキャリアや働き方を踏まえ、勤務時間などを自分で判断できるよう支援する必要があります。
- 非正社員から短時間正社員への転換や、短時間正社員から通常の正社員への転換制度を設け、希望に応じて転換できるようにしましょう。
- 「短時間正社員」の雇用区分を設けず、条件を満たした場合に所定労働時間を短縮できる制度を設ける方法もあります。
選択的週休3日制
制度の概要
- 従業員が本人の希望によって週休3日の働き方を選択できる制度です。
- 本制度では、制度設計の例として、1日あたりの所定労働時間はそのままにして、例えば1日8時間×週4日勤務とするなど週の労働時間を減らす方法(この結果、労働時間に応じて給与も減少)のほか、1日あたりの所定労働時間を延長し、週・月あたりの労働時間を維持する方法(例:1日10時間×週4日勤務)や週休2日制の勤務形態から給与水準を維持したまま休日を増やす(労働時間を減らす)方法などもあります。
導入のポイント・効果
- 休日が増えることで、リスキリングや副業、地域活動など、新たな挑戦に取り組む時間をこれまで以上に確保できます。
- 休み方を柔軟に設計でき、仕事以外の活動にも取り組めるとともに、勤務日は効率的に働く意識が高まる点が大きな特徴です。
- 制度の効果的な運用のためには、残業を前提にした働き方の見直しや、休みを取得しやすい風土・体制づくりなど、基本的な働き方改革の取組があわせて重要となります。
留意点
- 勤務日数の減少により、従業員間のコミュニケーション機会が減らないように心がけましょう。
- 1日の労働時間増加による身体的・精神的負担に留意する必要があります。
フレックスタイム制
制度の概要
- 働く「時間帯」を柔軟にする制度です。一定の期間についてあらかじめ定めた総労働時間の範囲内で、従業員が日々の始業・終業時刻、労働時間を自ら決めることができます。
- 「清算期間」と呼ばれる単位(最長3カ月)を設定し、その期間内であらかじめ定めた総労働時間を働けばよい仕組みです。
- コアタイム(1日のうちで必ず働かなければならない時間帯)を設ける方法と、設けない方法があります。
導入のポイント・効果
- 日々の業務量や仕事の進捗、個人事情に応じて柔軟に働けるため、効率が上がります。
- 自分で時間を管理する意識が育ち、従業員の自律性が高まります。
留意点
- 導入においては労働基準法上で定められた手続きを経る必要があります。
- コアタイム(1日のうちで必ず働かなければならない時間帯)の設定の有無や時間帯について、会議の実施やチーム連携に必要な時間を考慮し、業務に支障が出ないよう定める必要があります。
- フレックスタイム制は、始業・終業時刻を自分で調整できる業務でないと活用が難しく、職種によっては運用が適さない場合があります。
- フレックスタイム制は、始業・終業時刻を労働者の決定に委ねることになりますが、その場合にも使用者は労働時間を把握する義務があり、使用者は、各労働者の各日の労働時間を把握しなければなりません。
2 「働く場所」の選択を支援する制度
勤務地限定正社員制度(多様な正社員制度)
制度の概要
- 勤務する地域や事業所を限定した「勤務地限定正社員」の雇用区分を設ける制度です。
- 勤務地を特定のエリアや事業所に限定し、転居を伴う異動を行わない働き方を定めています。転勤がない範囲であれば、事業所間や職場内での異動などによって柔軟な人材配置も可能です。
- 雇用区分を選択した従業員は、転居を伴わない異動の範囲内で勤務することが可能になります。
導入のポイント・効果
- 転勤や単身赴任、家族帯同などによる生活上の負担を軽減し、安心して働き続けられることができます。
- 転居がないため近くに住む親の介護を続けやすいなど、従業員のワーク・ライフ・バランス向上に寄与して定着を促します。
留意点
- 職務やチーム構成の調整、地域間での人材配分を検討する必要があります。
- 転居を伴わない勤務となるため、制度利用者のキャリアの幅や異動機会が制限される可能性があります。
- 転居がないことに伴う賃金の水準や昇進・昇格の取扱いについて、労使で十分に話し合うことが必要です。
勤務地限定正社員制度(多様な正社員制度)
制度の概要
- 従業員が希望に応じて「転勤あり/なし」を選択できる制度です。
- 勤務地限定正社員のように雇用区分を設けることなく、個々人が転勤有無を選択できます。
- 転勤の有無だけでなく、転勤の範囲(全国転勤、エリア内転勤、転居を伴わない転勤など)を選べる制度とすることもできます。
導入のポイント・効果
- 従業員の希望に沿った配属が可能で、モチベーションや定着率の向上を期待できます。
- キャリア形成と生活の両立を支援できます。
- その時々のキャリアや生活状況に応じて転勤の有無を選択できる点が、この制度の特徴です。
留意点
- 職務やチーム構成の調整、地域間での人材配分を検討する必要があります。
- 希望に応じた転勤範囲を明確にし、制度の周知をはかる必要があります。
- 異動範囲の選択に応じた賃金の水準や昇進・昇格の取扱いについて、労使で十分に話し合うことが必要です。
テレワーク(サテライトオフィス勤務含む)
制度の概要
- ICTを活用し、自宅などの会社外で勤務できる制度です。
- 業務を行う場所に応じて、労働者の自宅で行う「在宅勤務」、労働者の属するメインのオフィス以外に設けられたオフィスを利用する「サテライトオフィス勤務」、移動中や出先など臨機応変に勤務する場所を選択する「モバイル勤務」に分類されます。
導入のポイント・効果
- 通勤時間が短縮され、心身の負担が軽減されます。
- 家族の状況やライフステージに応じて業務を継続できる働き方を提供することにより、離職の防止が期待できます。
- 地域を超えた人材確保が可能となり、遠隔地の人材採用や事業継続にも役立ちます。
- 災害時や感染症流行時の事業継続にも有効です。
留意点
- 日々のコミュニケーションを工夫するなどして、情報共有が滞らないようにすることが重要です。
- 在宅勤務やモバイル勤務時に、仕事を行う時間とそれ以外の生活時間を明確に分けるなど、仕事と生活の境界管理を支援する必要があります。
- セキュリティや業務ルールを徹底し、適切な勤務環境を整備する必要があります。
3 「職務内容」の選択を支援する制度
職務限定正社員制度(多様な正社員制度)
制度の概要
- 担当業務の範囲を限定した「職務限定正社員」の雇用区分を設け、特定の職務に特化し、専門性を活かしながら働くことを可能にする制度です。
- 職務範囲を明確にし、高度専門業務や特定職務に特化することで、専門性を高めることができます。
導入のポイント・効果
- 特定分野の専門スキルを持つ人材の確保・育成・キャリア形成がしやすくなります。
- 特定の職務でのキャリア形成を希望する人のモチベーションアップや定着につながります。
- 職務の範囲をどこまで限定するかを事前に検討することが重要です(例:職種名レベルで定めるのか、担当業務の具体的内容まで細かく限定するのか)。
留意点
- 業務範囲が限定されるなかでも、継続的に専門性を高められるようなキャリアパスの設計が必要です。
- 職務限定正社員が担当しない業務(職務の範囲外の業務など)が、他の正社員に集中しすぎないよう、業務分担や公平性の確保に留意が必要です。
- 従業員が制度の目的や期待される役割を理解できるよう周知や支援を行う必要があります。
詳しくは下記参照先をご覧ください